(武将をゲームに登場させてマスクデータを見るたびに相性値が変化していたりします。理由はわかりません)
悠真「じゃあ準備期間10回中の1回目。俺からいかせてもらうぜ!」
悠真「用間篇の三。孫子曰く!間者を使う者は智と仁と機微を兼ね揃えなければならない。『非聖智不能用間。非仁義不能使間。非微妙不能得間之実』!」
陽介「・・・」
悠真のやつ。付け焼き刃の中国語なのに堂々と叫ぶから凄い迫力だ。これを僕もこれをやらなきゃいけないんだよね!?と思っているとカタカタカタ!と凄いスピードでPCを操作する音が聞こえた。
陽介「辛憲英(シンケンエイ)という武将が作成された。僕は聞いたことがないんだけど三国志に辛憲英という人物が登場するの!?」
悠真「曹操の配下である辛毗の娘。三国志のファンには有名でゲームにも登場したりする聡明な女性だ。極善で良かったよ。俺は辛憲英が好きだったから・・・」
悠真は急に無言になると軽く咳払いをした。
悠真「どうだ陽介?俺はこの辛憲英を部下として三国志の英雄達と戦っていくんだぜ?想像しただけでもワクワクしてくるだろ?うおおおおお!
そういうと悠真はぬおおおお!と大声を出してPCの電源コードを強く握りだした。ぐぬぬ、なんだか悔しい気分になってきたぞ。僕も早く配下の武将を作ろう。
陽介「呉子曰く!身分は問わぬ、勇気ある者に我が精鋭を与える!『令賤而勇者、将軽鋭以嘗之』!」
正直まだ『二国志』のルールがよくわからないから武将を作れそうな二文を適当に抜き出した。さてさて結果は?
呉敦(ゴトン)・・・?呉敦とは何をした英傑なのだ?ま、まずい。三国志は全然わからない。
陽介「と、ところで。なぜ悠真は欲しがっていた女武将を作っておきながら、僕には男の武将を配属するんだよ。それに、そちらの辛憲英の方が能力が高くて強そうじゃないか」
悠真「配下となる武将は50人用意した(新武将を50人登録)。その中から消費した言霊の数(多いほど強い)と引用された言葉の意味から厳正に審査をして武将を選出しているのだ。自分に配属された武将が弱いとケチをつけたいのかもしれないけど言霊が二つで武力85、知力61の呉敦が手に入るなんて破格の待遇であり感謝してほしいくらいだな」
ぐぬぬ、武将を選んでいる基準がわからないんだからしょうがないだろう。くっそ!せっかく仲間になってくれた呉敦に申し訳なくなってきた・・・。
陽介「待てよ・・・?」
どうやら言霊の数が少ないと配属される武将の能力は弱く設定されてしまうらしい。確かこの準備期間では武将を作成するだけでなく強化することもできるんだよな?
陽介「悠真。現在行われている準備について質問があるんだけど武将の強化もできるんだよね?」
悠真は『良い質問だね!』と両手の人差し指をこちらに向けると嬉しそうに解説をしだした。
悠真「お前もやっと二国志に興味を持ってくれたみたいだな!引用した文章によって武将を強化することもできる。能力(武力、知力、政治、魅力)を強くするのはシステム上、ランダム性があり時間がかかるので禁止としているし、超常現象にあたる技能も禁止。それ以外の特技と陣形の獲得は自由に獲得できるぜ。ちなみに『火計、混乱、・・・』と並んでいるのが特技。『錐行、鶴翼、・・・』と並んでいるのが陣形だよ」
なるほど、二国志のルールはわかった。あとは武将を強化するのか増やすかだが・・・。呉子曰く『君能使賢者居上、不肖者処下、則陣已定矣』。すなわち賢者を高い地位にして不肖者は低い地位にとどめれば敵に乗ずる隙なし。言霊が少ない場合は武将を配下にしても能力が低く設定されてしまう。それならば武将を増やすよりも能力の高い武将を強くして活躍させる機会を増やした方が有利なのでは?
悠真「超常現象の特殊能力は『仙術、雨乞、天変、幻術、妖術、水計、占卜』と定義しており偶然にも武将がこれらの特技を1つ2つ3つと獲得した場合は『①水陣+史実モードの能力②治療③任意』の順番に変化させる。ただし占トは諸葛亮など史実モードで所有している武将のみOKだ」
なんだかルールを質問したら新たなルールが追加されてしまったぞ。まあ悠真の気まぐれは放っておいて、これからは言霊が二つ以下になった場合、能力の高い武将(今の段階では自分)を強化しよう。強化として獲得するのは陣形にしようか、それとも特殊能力にしようか。
陽介「悩むな・・・。特殊能力と陣形、どちらの方が戦いの決め手になるのだろうか」
それにいくつかの特殊能力が超常現象として禁止されてしまったようだ。組み合わせるのが難しくなったので陣形獲得の方が有効かもしれない。クソッ!強化の指針がわからないよ(泣)。
悠真「それじゃあ10回中、2回目のサイコロを振るぞ~!」
悠真「むっ!」
サイコロの結果を見て悠真の表情が一瞬陰る。悠真の言霊は二つと少ないけど僕は一つしかないんだから、いつものように『やっほおおお!』とか喜べば良いのに。
悠真「おい・・・陽介・・・」
悠馬が気迫のこもった目で僕を睨む。いつもふざけたことばかりしている悠真が、こんなにマジな目で見つめてくるなんて初めてのことだ。
陽介「な、なんだよう」
悠真の顔がずずいっと僕に迫ってくる。
悠真「あのな・・・ちょっと・・・お花を摘みに行ってくる」
陽介「・・・はぁ?お、お花ぁ?お前は何を言ってるんだ!?」
悠真「やぼなことは聞くなよ!馬鹿野郎!覗くんじゃねえぞ!」
照れくさそうにヴェルサイユ宮殿の隠語をほざいた悠真はトイレに行ってしまった。だ、だれが覗くかよ!バカヤロ-!
陽介「悠真は部屋から出ていったか。どうする・・・?」
決まっているだろう。うるさい奴が消えたので特殊能力について調べるのだ。僕はパイこね式携帯電話を取り出すとブラウザを起動させて『三国志Ⅴ 特技 最強』と検索した。
陽介「友達をボコボコにした・・・?まさにこれだ!よしよし、言霊を唱えてこれらの特技を身につけさせれば必勝だ!!」
うーむ、三国志5をやりこんだ人による強力な特殊能力の組み合わせを検索してしまうとはなあ。これは凄い、まさに経験者は語るだ。いくつか例が記載されているけど、とりあえず僕のキャラを一番上にならんでいる『水計・etc』の技能にしてしまおう。
陽介「ええと、どれどれ。水計、雨乞、それから天変と・・・あれ、これって?」
3つとも悠真が言っていた『超常現象』にあたる技能だ。確か使用禁止とか言っていなかったか?強すぎるから使用禁止にしたってのかよ!これじゃあ検索した意味がないじゃないか。
陽介「ま、まてよ。一番下に並んでいる『火矢、遠矢、etc』には禁止されている技能が仙術しかない・・・」
そのとき、のっしのっしと悠真がトイレから帰ってきた。
悠真「よーしやるぞ。俺はやるぞ!来いよ!来いよ!んああああああああ!」
悠真が帰ってきたので僕はパイこね式携帯電話を隠した。別に攻略を検索したのがバレたくなかったからではない。汚い手で触ってほしくなかったからだ。技能については火矢や遠矢あたりを覚えれば良いだろう。
陽介「あっ!」
ちょっと待てよ?技能を覚えるには呉子の文を引用しなければいけないのだったな?よく見たら『~矢』とか『~射』とか弓の技能ばかりじゃないか!これを覚えられるだけの弓に関する文章が呉子に記載されていたっけ?騎射に関する記述なんて絶対に無かったはずだ!
悠真「いくぞ!?いくぞ!?俺の次の一手はこれだああああ!」
僕の次の一手はどうする?考えろ。考えろ。さっき見たサイトの中にヒントはなかったか?経験者は語るのだ!絶対あの中に悠真に勝つヒントがあるはずなんだ!
陽介「経験者は語る・・・経験者は語る・・・あっ!?」
悠真「孫子曰く!」
陽介「呉子曰く!兵と馬の力を絶やすことなくせよ!『無絶人馬之力』!」
悠真「なにっ!?」
悠真は武将に治療を覚えさせた僕を不思議そうに、そして何かを疑うような眼差しで眺めてきた。別になんてことはない。経験者に学んだだけさ。
悠真「まさか・・・ね」
そして静かに笑って言った。
悠真「古より善く戦う者は、勝ち易き戦いに勝つものであった。『古之所謂善戦者、勝於易勝者也』