(史実モードで新武将を配下にして始めると君主の相性に近くなるような気がします。最終的な相性は準備が終わった段階で決定いたします)
準備期間の2回目が終わった。
陽介「悠真のやつ。女の武将ばかり増やしているな」
僕の皮肉もなんのその。悠真は自軍に配属した女武将を『フンフフーン』と鼻歌まじりに眺めている。くやしいけど・・・見ていて楽しそうだ(笑)。
悠真「それじゃあ!3回目のサイコロいっくよー!」
そういうと悠真はPCを操作して『おっ、おおん!?』と、うめいた。
陽介「僕の天命は2。言霊は0か・・・」
準備期間に10回もサイコロを振るのは言霊が0になり何もできないターンがあることを考慮してのことだ。覚悟はしていたけどテンションは下がってしまうよなあ。
悠真「そりゃあ天命が1とか2になることもあるさ。お前ならあと2回か3回はあるって。だからいちいち落ち込むなよ!じゃあ言霊を唱えるぜ!」
落ち込む僕に追討ちをかける悠真。お腹が減っていなければ殴っているのに。ちくしょう(泣)。
悠真「孫子曰く!名君、賢将は智謀の人材を見抜く力がある!それゆえ成功をおさめることができるのだ!『故惟明君賢将、能以上智為間者、必大功』!」
黄月英(コウゲツエイ)という武将が作成された。おや?この女性の名前は聞いたことがあるぞ。
悠真「黄月英は有名な軍師である諸葛孔明の奥さんだぜ。架空の人物だったとか、美人だったとかそうではなかったとか、孔明に劣らず聡明であったとか、三国志ファンの間では物議をかもしだす人物だ。まあ俺は実在の人物で美人であり聡明であった説を推すけどな!」
そういうと悠真は女だらけの配下を眺めながら『ああ絶景かな、絶景かな~!」とほざきだした。すごい浮かれようだ。たぶん、何としても配下にしたかった武将の内の一人なのだろう(笑)。
陽介「楽しそうにしているところ悪いけど、僕は3回目の言霊が0で何もできなかったんだ。早く4回目を始めようぜ」
おう!いいぜ!うっほー!次は俺の天命は14!それで大喬小喬を作るマンになるんだ!と意気揚揚に悠真はサイコロを振った。
僕は頭の芯がスコーン!と打たれた錯角に陥いる。サイコロの結果は12。言霊は4だ。こ、これで戦略の幅が広がるぞ。今までは能力の高い君主(僕)のみを強化するつもりだったけど、4つの言霊を使って強力な武将を作れば、強化した僕と配下の武将で攻防ともに柔軟な布陣を築くことができるはずだ。三国志5は未プレイだけど説明書と攻略本で知った多種多様な陣形と特殊能力の存在、そして強力ではあるが効果の対象となる人数が少なくなりやすい『二国志の言霊システム』では寡兵が有利なのだと僕の直感が告げている。
陽介「それにしても悠真の言霊は先ほどと同じ3か。てっきり0になるかと思っていたのに運の良いやつだ」
悠真は『運が良いのはYOUも同じだNE!早く言霊を唱えちゃえなYO!』と、変なイントネーションの言葉で急かしてきた。天命が10で嬉しいのが半分、僕が12を出してくやしいのでふざけてごまかしているのが半分ってところだろう。それにしてもサイコロの目がこんなに嬉しいなんて初めてだ。ギャンブルってこんな感じなのかな。
陽介「では、いかせてもらうよ!呉子曰く!およそ人は将の勇を論ずる。しかし軍を指揮して勝利をもたらす将は文武に通じている者なり!『呉子曰、夫総文武者軍之将也。兼剛柔者兵之事也。凡人論将、常観於勇!』」
陽介「孫観(ソンカン)!?こ、こいつは・・・」
とてつもなく強い武将だ。君主である僕よりも強い。自分は孫観(ソンカン)という武将を聞いたことがないんだけど知る人ぞ知る有名な豪傑なのかな?
陽介「悠真!孫観ってどんな人物なの!?有名なの!?」
悠真「に、二千年後も名前が知られているんだから、そりゃあ有名な武将に決まっているさ(能力値は適当に決めていたら高くなりすぎただけ)。どんな人物なのかは調べてみてくれ・・・」
ふーん、そうかあ。あとで調べてみよっと!孫観!気に入ったよ。なんだか楽しくなってきてしまったなあ(笑) 悠真はウキウキと今後の展開について考えている僕を微笑ましく眺めながら、しっかりと前を見据えて迷い無く言霊を唱えた。
悠真「孫子曰く!戦上手は勢いを重視し、一人一人の動きには過度に気をかけない!『故善戦者、求之於勢、不責於人!』」
孫氏(ソンシ)という武将が誕生した。
陽介「そ、孫氏って・・・?おい、悠真!?おまえ・・・」
悠真「孫氏とは孫策の娘で陸遜の妻になった女性だ。三国志のゲームで孫氏といえばこの人だったりするんだけど、ただ単に『孫氏』と姓を表記させただけでは分からなかったかな?」
そうじゃないんだ悠真。僕はGM(ゲームマスター)をしながら自軍の配下を女まみれにしているお前に引いているんだ!
陽介「そ、そうか。それで孫氏と言霊になった文章との関係は?」
悠真「う、うーん。あるようなないような・・・うむ。俺の主観だ」
『なにしろ50人も作ってしまったから選ぶのが難しくて』と困った顔をする悠真。なんだそれは。まあやつの独り言なんてどうでもいい。なぜ悠真はいっこうに武将を強化しないのだろう。言霊2で作った可太后はともかく、他の武将は知力と政治力がトップクラスだし悠真自身なんて満遍なく高い優秀な能力値なのだから言霊3の将を量産するよりは強化をするという選択肢もあるのに。もしかしたら孫観の様な言霊4の強い武将ができるまで強化は控えているのか、君主(僕や悠真)を戦闘向きに強化させたらまずい理由があったりするのだろう。
陽介「ねえねえ悠真。君主が戦闘にするデメリットってあるの?」
悠真は『うむ』とうなづいた。
悠真「戦争の際に君主が倒されると即敗北となる。通説にある桶狭間の合戦のように、どんなに兵力差で圧倒していても、君主を討ち取られると即負けて領土を切り取られてしまうのだ。将棋の王将みたいなものとも言えるな。だから君主は狙われやすいけど、それを逆手にとって前線を奇襲したり囮に使ったりもできるかなあ」
うむうむ、なるほど。君主は後方で指揮を揮ってもいいし、意表をついて前線にでてもいい。こうなると、ますます孫観の存在がありがたく思えてくるな。敵の目を孫観に釘付けして君主を遊撃隊にするという手もありそうだ。
悠真「じゃあ次いくぜ!5回目のサイコロ!」
悠真は次こそ言霊4、言霊4だあああと意気込みながら5回目のサイコロを振る。
悠真「く、くっそ、言霊がゼロ!?ちっくしょおおお!俺の『オール・イン!』があああ!」
悠真がわけのわからない言葉を慟哭する。まあ10回やれば1回くらいはこんなこともあるさ。 とりあえず、この言霊2つで孫観を強化してしまおう。僕は攻略本を読んで、特殊能力や陣形の効果を確認し始める。やはり、この能力を覚えさせるしかないだろう。初めて目にしてからこれは間違いなく強いと直感したものがあるんだ。
陽介「呉子曰く!たった一人の賊でも命を捨てる覚悟があれば、千人もの人間を震えあがらせることができる!『是以一人投命、足懼千夫』!」
僕は孫観に『無双』を覚えさせた。
三国志5では部隊が敵を包囲すると攻撃力が上昇する。特殊能力の『無双』は、その包囲効果を無効にするのだ。これは凄いことだぞ。古来より勝利は包囲殲滅によってもたらされてきた。無双の能力はそれを覆す、もしくは一時的にでも戦術行動を惑わす一手となりえるだろう。
悠真「ほう、無双を覚えさせたのか。では次にいこう。次こそ大喬小喬だ!!」
6回目のサイコロが振られる。 ぬ、ぬう。悠真は言霊4か。『さ、さっそく孫子を読んで大喬小喬を作れる文章を探してみる!』と読書に集中する悠真。そんな文章あるものか。それに孫氏ってそういう書物じゃないから!!
陽介「ね、ねえ悠真。二喬を作る文章を探しているところ悪いんだけど質問していいかな?無双をもっていれば包囲されても防御低下が無いんだよね?それだと強すぎるから対策とかがあったりするのかなあ?」
想像してもらいたい。関羽みたいな文武に突き抜けた将が包囲殲滅を無効にする『無双』を持っているとする。そんな部隊を倒す方法は関羽と同じくらい強い将をずらりと並べるしかないだろう(笑)。さすがにそれではゲームが白けてしまうので何かしら対抗できる戦術案があると思ったんだけど。
悠真「無双を持っていても城を守って動けない守戦の場合、一方的に弓でやられてしまうこともある。あとは火計や混乱で翻弄されてしまうとかだな」
なるほど、遠距離攻撃を防ぐ手段があれば良いということだな。選ぶべき特殊能力がわかったぞ!
陽介「溝を深く塁を高くして、強弩による守りを固めよ!『深溝高塁、守以強弩』!」
孫観に『応射』を覚えさせた。応射は弓の攻撃をうけると自動的に反撃してくれる能力だ。つまり痛み分けにしてくれるわけだな。これで攻撃力の低い武将に囲まれてみじめに倒されることはなくなるはずだ。悠真は『ほほぅ、これはこれは』などと興味深そうに孫観を眺める。いいから早く大喬小喬を作ればいいだろう。そもそも、そんな文章あったかわからないけど。そして悠真は声高らかに中国語を叫んだ。
悠真「臨機応変に通じる者は、用兵を知る『故将通於九変之利者、知用兵矣』!」
悠真は4つの言霊のうち2つを使用して王凌(オウリョウ)という武将を作った。なんだそりゃ!?言霊を2つだけ使うなんて、そんなのありなのか!?いや、それよりもだ。なぜ1回で言霊を4つ使い切らなかったのだ?言霊4つを使えば王凌よりもはるかに強い武将が作れただろう!?悠真は動揺する僕のことなど素知らぬ顔で言霊を唱えた。
悠真「将を脅かす5つの危険がある。そのうちの必死は将を殺してしまうだろう『故将有五危。必死可殺也』」