(武将の画像は三国志ツクールの顔を貼り付けています。)
悠真「やっぱり三国志5は面白いなあ!」
陽介「おい・・・悠真・・・」
悠真「曹操は最高だぜ!強敵だらけの初期配置!その強敵を打ち破る天才的な能力で中原を制覇していくプレイは何度やっても爽快だな!プレイヤーの腕次第でどんな戦略でも採用できる三国志屈指の英雄~♪」
僕の名前は陽介。数ヶ月後に受検をひかえた学生だ。勉強に勤しむ毎日を過ごしていたのだけれど、学校から帰る途中、悪友の悠真から『用事があるから家に来い』と連絡があり、図書館での自習をさぼってホイホイと自宅へ上がり込んでしまったのである。
陽介「おい悠真、用事ってなんだよ」
悠真「中原を制覇しても河北や江南にいる勢力との戦いがあるので中盤も楽しくてたまらん!」
悠真はゲームに熱中していて自宅を訪問した僕に気づいていない。
学校から帰ろうとしていたところを『俺の家に来い』などと呼び出しやがったくせに無責任なやつだ。しかも何やら楽しそうな独り言をしゃべり続けやがって!
陽介「おいっ!」
悠真「ぬおっ!」
僕の怒鳴り声に驚いた悠真は椅子から転げ落ちるとノートPCに接続されている機器を体に巻き付けながら床を転がり回った。悠真の肘に当たったマウスがカチカチと音をたてる。
悠真「あっ!転んだ拍子に董卓を選んでゲームを始めてしまった・・・。この名声の低さを見ろ!どうするんだよ!呂布や李儒を活躍させて頑張っても配下達から見放されてしまうマゾプレイが始まっちゃうよぉ・・・」
悠真は起き上がると悲しそうな顔をしながらPCモニターを凝視してブツブツとつぶやき始めた。さっきは楽しそうに画面を眺めていたのに驚かしたりして悪いことをしたかなぁ。
悠真「だけど・・・これはこれでありだな!たとえ呂布が裏切ろうと弟の董旻に裏切られようと、圧倒的な暴力で人材を取り返して屈服させていく・・・董卓様にはそれが可能なのである!なぜなら!世界は『力こそパワー』だから!」
そういうと悠真は画面に表示された人相の悪い武将を見ながら少年の様に目をキラキラと輝かせた。こいつの『三国志大好き』っぷりは、すっころんで床に頭をぶつけたくらいでは萎えたりしなかったのだ。僕はよく歴史の本を読んだりするけど三国志の知識では悠真に勝てない。
陽介「悠真、急に自宅に呼びつけたりして用事ってなんだったんだよ。僕はやらなきゃいけないことがあって・・・」
僕が話しかけると今までモニターを見ながら楽しそうに独り言をつぶやいていた悠真の動きが止まる。そして無言になると静かに椅子を回転させながら真後ろにいる僕の方へ振り返った。
悠真「一緒に三国志5をやって遊ぼうぜ。明日は学校も休みだし、うちに泊まっていけよ」
さっきまでの悠真とは雰囲気がかわり穏やかな目で僕のことを見つめてくる。きっと奴には何でもお見通しなのだ。幼なじみの悠真は僕にとって一番の理解者なんだ。
陽介「だけど僕はこれから勉強をしなきゃ・・・。それにやったことのないゲームで勝負をしても悠真には勝てないよ」
言葉につまり気分が重くなっていく。
悠真「お前の将来の夢は知っている。そして毎日毎日、目標に向かって頑張っているのも俺は知っているよ」
そういうと悠真はマウスをカチカチと鳴らしてゲームを操作して、ある武将の画像を表示させた。
悠真「お前と三国志のゲームをやれば、かなり楽しい勝負になる気がするんだけどなあ。陽介くん、忙しいのはわかってるんだけど、ちょっと俺の遊びに付き合ってくれない?お願い!!」
手の平を合わせて『お願い!』のポーズをする悠真。こいつなりに僕を励まそうとしてくれているんだ。一日くらいは外泊しても許して・・・もらえないだろうけど、俺はこいつと一緒にいたい。
陽介「わかったよ。勝負に負けたお前が泣きわめいて悔しがる姿が見たくなった。今日は悠真の家に泊まらせてもらうよ」
僕はそういうと悠真は意地悪な顔をして笑った。
悠真「そうこなくっちゃ!それに奇遇だなあ。俺も陽介が悔しんでのたうちまわって失禁するところが見たいと思っていたんだ。『ああ、僕ちゃんの得意分野で悠真に負けてしまったよお』ってな」
ずいぶんと僕を酷い目に遭わせるつもりみたいだけど失禁を楽しみにしてどうする。ここはお前の部屋だぞ。
陽介「だけどお前に負けても僕は悔しいと思わないかもしれないよ。何しろ悠真の方が三国志に詳しいし、僕はこの三国志5というゲームをやったことがないんだ」
悠真だってそんなことはわかっているだろう。不利な僕でも楽しんでもらえるよう場の雰囲気を盛り上げようとする、奴なりの配慮なのである。
悠真「いやいや俺が有利なんてことはない。ともすればお前の圧勝という終わりを迎えるかもしれない。今回のゲームでは俺が考案した特別なルールを採用しようと思っているからな」
僕は嫌な予感がした。悠真は昔から常識外れな発想をするのが得意なのを知っていたからだ。 悠真「それでは特殊ルールの説明を始める。その名も・・・『二国志』だ」